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舟山 知夫; 坂下 哲哉; 横田 裕一郎; 小林 泰彦
no journal, ,
重イオン一つが細胞に及ぼす影響を明らかにするためには、細胞一つ一つを正確に狙い、あらかじめ設定した個数のイオンを照射することができる、細胞照射用重イオンマイクロビーム装置が必要になる。そこで、私たちの研究グループでは、これまでコリメーション式重イオンマイクロビーム装置を用いた細胞照射応答の研究を進めてきた。しかし、コリメーション式重イオンマイクロビーム装置では、金属板に一つだけ空けたピンホールでビームを微小化する際に生じる、ピンホールエッジでの散乱を避けることができないため、照準できるビームサイズに限界があった。そこで、原子力機構TIARAのAVFサイクロトロンの垂直ビームラインに、四重極磁気レンズで重イオンビームを最小径1mまで微小化し、大気取り出しをすることができる新たなマイクロビーム装置を設置した。この装置を用いて、細胞への照準照射を実現するために、ビームライン直下に細胞照準用倒立顕微鏡と、細胞試料用電動ステージを設置した。このシステムを用いたHeLa細胞への照準照射実験の現状について報告する。
山下 真一; Funtowiez, D.*; 前山 拓哉*; 翠川 匡道*; 岡 壽崇; Baldacchino, G.*; 田口 光正; 木村 敦; 工藤 久明*; 勝村 庸介; et al.
no journal, ,
これまで治療用重粒子線を用いた水の放射線分解生成物のうち主要な水和電子,ヒドロキシルラジカル(OH),過酸化水素の収量測定を行ってきた。Coumarin-3-carboxylic acid (CCA)をOHの捕捉剤として用い、反応後生成される安定なケイ光物質7OH-CCAを定量することでOH収量を高感度に測定できる手法の開発も行ってきた。本研究では実際の治療でガン患部に重ね合わされるブラッグピーク付近でOH収量がどのようになっているか実験的に明らかにすることを目指した。照射には放射線医学総合研究所HIMACからのC290及び135MeV/uなどを用い、どの重粒子線でもブラッグピーク付近でOH収量が極小値をとること、ブラッグピーク直後で収量が数倍に跳ね上がることなどが明らかとなった。高エネルギー重粒子線のブラッグピーク付近では核破砕により生成した加速イオンよりも軽い粒子の寄与が大きくなることが知られているため、今回得られた測定結果をHIBRACやPHITSといった核破砕シミュレーションと合わせて現在検討を進め、OH収量に対する核破砕粒子の寄与を明らかにしているところである。
岡 壽崇; 山下 真一; 翠川 匡道*; 佐伯 誠一; 室屋 裕佐*; Lin, M.; 上林 將人*; 安西 和紀*; 工藤 久明*; 勝村 庸介
no journal, ,
代謝で発生する活性酸素種と生体内障害との因果関係の解明においてはOHやOといった活性酸素種に関するフリーラジカルの挙動を明らかにする必要があり、これらのフリーラジカルの選択的検出及び定量が不可欠である。本研究では高時間分解のパルスラジオリシス法を用い、主要な水分解ラジカルである水和電子(e)やOHに対するCYPMPOの反応性を調べ、標準的なスピントラップ剤であるDMPO(5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-oxide)と比較した。さらに、線照射によって形成したスピン付加体をESR測定で調べることにより、活性酸素由来のフリーラジカルの挙動を検討した。
佐藤 克俊*; 錦野 将元; 岡野 泰彬*; 長谷川 登; 石野 雅彦; 大島 慎介*; 沼崎 穂高*; 河内 哲哉; 手島 昭樹*; 西村 博明*
no journal, ,
レーザープラズマX線を用いたマイクロビーム装置により、X線を癌細胞に照射することにより発生するDNA二本鎖切断を検出した。ターゲットとしてCuフォイルを用い、レーザーの照射により8KeV K殻特性X線を発生させ、ポリキャピラリーX線レンズを用いてX線を集光し細胞へ照射した。X線スポットの確認のためにガフクロミックフィルムEBTを用いた。がん細胞株としてヒト肺腺がん細胞株A549を用い、照射終了30分後に抗-H2AX抗体, 抗リン酸化型ATM抗体を用いた免疫蛍光染色法によりDNA二本鎖切断部位を検出した。レーザープラズマX線の線量はレーザー1ショットあたり0.12mGyであった。免疫蛍光染色の結果、レーザープラズマX線の照射により誘発された-H2AX及びリン酸化ATMのフォーカス形成が確認された。フォーカス陽性細胞は直径約600から900ミクロンの範囲に存在しており、この範囲はガフクロミックフィルムEBTの濃度変化から求めたX線スポットサイズとほぼ同等であった。今後はX線集光径を縮小し、X線発生効率の向上により線量率を増加させ、がん細胞の細胞内局所領域における放射線影響研究を展開する。
横谷 明徳; 牛込 剛史*; 田内 広*; 鈴木 雅雄*; 鶴岡 千鶴*; 野口 実穂; 藤井 健太郎; 鹿園 直哉; 渡辺 立子
no journal, ,
本研究では、放射線のトラック構造とDNA損傷の関連を明らかにするため、加速器施設から得られるHe, C及びNeイオンを試料DNAに照射し、誘発されたDNA損傷の線エネルギー付与(LET)依存性を調べた。特に水ラジカルを解さない直接効果に注目するため、高水和状態のプラスミドDNAをモデル照射試料分子として用いた。1本鎖切断はLETに大きくは依存しなかったのに対しグリコシレースで鎖切断に変換される塩基損傷は、LETの増加とともに激減した。これは高LET域では修復酵素の活性を妨げるような難修復性の損傷が生じることを示唆する。また同じLETであってもイオン種の違いにより損傷収率は異なった。一方2本鎖切断収率は、Heイオンでは20keV/mに極小値を持つがこれより高LET側では急激に収率が増大しCイオンでもその傾向があった。これに対しNeイオンでは調べた300-900keV/mの領域でほとんど変化はなかった。以上から難修復性DNA損傷の生成は、単純にLETのみに依存するではなく放射線のトラックの空間構造に深く関連していることが示唆された。
横谷 明徳
no journal, ,
本研究では、放射線のトラック構造と放射線致死作用に深く関係するDNAの2本鎖切断損傷の関連を明らかにすることを目的とした。He, C及びNeイオンのLETを変えながら超らせん形状のプラスミドDNAに照射し、その電気泳動法により直鎖形に形状変化した分画を定量することでDSB収量を得た。その結果、HeイオンによるDSB生成収率は20keV/mに極小値を持つが、これより高LET側では急激に収率が増大し、120keV/mではその約4倍の値となった。しかしさらに高LET側では、再び減少に転じた。Cイオンでも80500keV/mとLETを上げていくとDSB収率は増大したが、その傾向はHeイオンに比べると小さかった。Neイオンでは、300900keV/mの領域ではDSB収率にほとんど変化はなかった。以上のことから、イオントラックからの直接的エネルギー付与により生じるDSBの収率はLETの増加に伴って増大するが、その傾向はイオン種によって違いがあることがわかった。
端 邦樹; 勝村 庸介; Lin, M.; 室屋 裕佐*; Fu, H.*; 山下 真一; 工藤 久明*; 中川 恵一*; 中川 秀彦*
no journal, ,
エダラボン(Radicut, 3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)は脳保護剤として2001年より日本で臨床利用されているフリーラジカル捕捉剤である。その高いラジカル捕捉作用から近年では放射線防護剤としての利用も検討されている。臨床における関心から抗酸化作用を調べた研究は多く存在するが、その反応性に関する研究については少ない。過酸化ラジカルとの反応や酸化反応を引き起こす酵素を使った実験結果が報告されているに過ぎず、OHラジカルとの反応性を調べた報告はほとんどない。OHラジカルは放射線による間接効果の主な原因であると考えられており、その反応性を評価することは重要である。本研究では、エダラボンとOHラジカルとの反応メカニズムを明らかにすることを目的とし、パルスラジオリシス法を用いて、エダラボンとエダラボンのフェニル基をメチル基で置換した1,3-dimethyl-2-pyrazolin-5-oneについてOHラジカルや他の酸化性ラジカルとの反応性を評価した。結果、エダラボンの反応においてOHラジカルは他の酸化性ラジカルとは異なる中間体を生成することが明らかとなった。一方、1,3-dimethyl-2-pyrazolin-5-oneの反応においてはOHと他の酸化性ラジカルとで同一の中間体を生成しており、エダラボンとOHラジカルとの反応は、フェニル基が重要な役割を担っていることが示された。従来、エダラボンの酸化性ラジカルとの反応性のメカニズムは電子移動反応や水素引き抜き反応であると考えられていたが、OHラジカルとの反応についてはフェニル基への付加反応が主たる反応であると考えられた。
藤井 健太郎; 鹿園 直哉; 横谷 明徳
no journal, ,
本研究では高輝度放射光施設(SPring-8)から得られる軟X線を線源とし、OHラジカルを介さず光電効果及び低速二次電子の作用により直接生じる損傷の収率の励起元素依存性を明らかにすることを目的とした。塩基除去修復酵素であるNth及びFpgによって認識されるピリミジン及びプリンの酸化損傷の収率は、酸素K殻イオン化を超えたエネルギー(560eV)の軟X線照射できわめて高い収率を示した。一方、窒素K殻イオン化よりも低いエネルギー(380eV)の照射では他のエネルギーに比べて極めて低い値を示した。また、一本鎖切断量は380eVと560eVとで2倍程度増加したのに対し、Nth及びFpgの認識サイトの量はおよそ10及び27倍と顕著に増加した。以上のことから、軟X線のエネルギーを選択することにより、特定種のDNA損傷を誘発することのできる新たな手法の可能性を示唆する結果が得られた。
吉原 亮平; 長谷 純宏; 野澤 樹; 滝本 晃一*; 鳴海 一成
no journal, ,
本研究では、遺伝子導入シロイヌナズナに炭素イオンビーム(220-MeV C)及び線を照射し、それらの変異誘発効果を遺伝子レベルで明らかにした。シロイヌナズナの乾燥種子に対して照射を行ったところ、線は高等植物内で、220-MeV Cに比べて、サイズの小さな変異を誘発する可能性が示唆された。また、G:C to T:AやA:T to C:G transversionの頻度が上昇しなかったことから、放射線により誘発されるグアニン酸化体の変異誘発に対する寄与は、乾燥種子内では小さいと予測された。われわれは、生育途中のシロイヌナズナ幼植物体に線照射し、変異解析を行った。線により幼植物体内で誘発される変異は、乾燥種子のものと類似しており、G:C to T:AやA:T to C:G transversionの頻度は、上昇しなかった。このことから、高等植物では、放射線誘発変異スペクトルに他の生物種との違いがあることが示唆された。
渡辺 立子; 平山 亮一*; 横谷 明徳; 寺東 宏明*; 鶴岡 千鶴*; 江口 清美*; 古澤 佳也*; 小林 克己*
no journal, ,
放射線による細胞致死の主な要因は、DNA二本鎖切断(DSB)にあると考えられてきている。しかし、重粒子線によって得られる細胞致死のLET依存性の特徴とは必ずしも一致しないDSBの測定結果が多く報告されており、DSBが致死の原因という図式に対する反論の根拠のひとつにもなっている。また、DSBのLET依存性は、細胞致死の結果と不一致なだけでなく、実験系による違いも大きく、統一的な見解を持つことが困難な状態である。そこで、われわれは、DSBと細胞致死との関係を明らかにするためにも、DSBのLET依存性の実態を把握する必要があると考えて、報告による結果の違いの原因について議論を重ねてきた。この結果は、本大会のワークショップで報告することになっており、本発表では、このワークショップの関連ポスターとして、これまでに得られている実験や計算の結果を紹介する。特に、放射線のトラック構造や線量(エネルギー付与)分布の観点から、DSBのLET依存性が持つ問題点を整理して発表するものである。
鹿園 直哉; 野口 実穂; 漆原 あゆみ; O'Neill, P.*; 横谷 明徳
no journal, ,
本研究では、塩基損傷,脱塩基部位,鎖切断を両鎖に含むクラスターDNA損傷を用い、損傷を含むオリゴヌクレオチドをプラスミドに組み込んで大腸菌野生株に形質転換し、誘発される突然変異の特徴を塩基配列レベルで調べた。脱塩基部位からなるクラスター,鎖切断及び脱塩基部位からなるクラスターにおいては、形質転換効率は低いものの、脱塩基部位を鋳型にグアニンが挿入されるタイプの変化や脱塩基部位での1塩基対欠失が起こりやすいことが明らかになった。一方、8-oxoG及びDHTからなるクラスターやDHT及び鎖切断からなるクラスターにおいては、変異が生じる頻度は低いものの、損傷を配置した塩基対以外での塩基配列変化が観察された。これらの結果から、大腸菌野生株において、塩基損傷からなるクラスターDNA損傷の突然変異誘発過程では、(1)少なくとも一方の塩基損傷が残ること,(2)損傷部位の極近傍で変異を生成する場合があること、が示唆される。
野口 実穂; 漆原 あゆみ; 横谷 明徳; 鹿園 直哉
no journal, ,
クラスターDNA損傷とは12ヘリカルターンに2つ以上の損傷を含むものとして定義されている。特に、電離放射線ではクラスター損傷が生じやすく、LETの増加とともに損傷の複雑性が増し、クラスター化が進むことがさまざまな実験から示唆されている。クラスター損傷の損傷構造として、一本鎖切断や二本鎖切断の近傍に塩基損傷を伴うような複雑な構造が増加することがシミュレーションから導きだされており、このような複雑な損傷が細胞内でのDNA損傷修復を阻害し、突然変異や細胞死などの生物影響を生むことが推測される。われわれは、クラスター損傷のモデルとして、二本鎖DNA上で相補鎖、及び同一鎖の近傍に一本鎖切断(SSB)と塩基損傷8-oxoGが存在するような構造のクラスター損傷を合成し、突然変異誘発頻度を調べた。その結果、両損傷が相補鎖に配置された場合は単独損傷に比べて変異誘発頻度が上昇する一方で、同一鎖に偏った場合には変異誘発頻度の上昇は見られないことを見いだした。相補鎖での変異上昇の原因として、8-oxoG近傍のSSBによる8-oxoG除去酵素Fpgの阻害が考えられる。しかし、同一鎖においては変異を抑制する原因、並びに近傍のSSBと8-oxoGの修復(プロセシング)における相互作用など、全く明らかになっていない。そこで、本研究では同一鎖上に配置されたSSBと8-oxoGの変異抑制の原因を探るため、in vitroにおける酵素反応系を用いて、SSBが8-oxoGと同一鎖近傍に存在する場合の8-oxoGのプロセシングについて検討を行った。
赤松 憲
no journal, ,
電離放射線によって生じるDNA損傷の種類や量は線質によって異なるといわれているが、その程度については未だ統一的な見解は得られていない。実験による損傷データは何らかの分析方法を用いて得られるが、一つの方法で得られる情報は、全体の損傷のごく一部であり、また目的の損傷を定量的に正しく検出できているか確証を得るのは困難である。したがって、検出対象となる損傷を2種類以上の方法で定量し、比較・考察することで、一つの方法では得られない知見が得られると期待できる。われわれはこれまでに、Co-60線等幾つかの線質で生じた損傷の、分析方法間の比較を行ってきた。DNA損傷の程度を知るための手段としては、閉環プラスミドDNAの鎖切断による3次元構造変化をアガロース電気泳動で見る方法が最もよく知られているが、1本鎖切断の収率に関しては過小評価されるといわれている。本発表では、幾つかの放射線で得られた損傷データ,過去の報告等を例示しながら、放射線化学と放射線生物学の橋渡しに益するDNA損傷データを実験的に得ていくための道程について議論したい。
横田 裕一郎; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
no journal, ,
がん分子標的治療の潜在的な候補として期待されているテロメラーゼの機能阻害に着目し、テロメラーゼ阻害剤MST-312と重粒子線の併用効果を調べた。ヒト子宮頸癌由来HeLa細胞を照射7日前にシャーレに播種し、照射24時間前にMST-312を010Mの最終濃度で添加した。炭素線(LET:110keV/m)あるいはCo線を照射した後、細胞を回収し、MST-312非存在下で再播種した。照射14日後に細胞を固定・染色し、50細胞以上のコロニーを計数した。5Mより高濃度のMST-312処理したHeLa細胞はコロニーを形成できなかった。1MのMST-312の照射前処理により、HeLa細胞の生存率は照射単独群と比べて相加的に低下したが、その程度は照射線量に依存しなかった。このことから、MST-312と放射線は、それぞれ独立した機序で細胞の生存率を低下させている可能性が考えられた。HeLa細胞の生存率を10%に低下させるために必要な炭素線あるいは線の線量は、MST-312の併用により、それぞれ1.2Gyから0.5Gy, 5.4Gyから4.0Gyに減らすことができた。
鈴木 芳代; 服部 佑哉; 坂下 哲哉; 菊地 正博; 舟山 知夫; 横田 裕一郎; 辻 敏夫*; 小林 泰彦
no journal, ,
神経系のモデル生物である線虫に、線を照射すると、線量に依存して運動が低下する。従来より、線虫の運動性の評価には、20秒あたりの頭部の屈曲回数(Body bends)が用いられており、照射線虫の評価も非照射線虫に準じてBody bendsを指標として行われてきた。しかし、体幹後部のくねりが緩くなり、移動の範囲が非照射線虫に比べて狭くなるなど、照射線虫に観られる全身的な運動の微妙な変化は、Body bendsでは評価できなかった。そこで、本研究では、放射線の運動への影響をより詳細に理解することを目的として、照射直後の線虫の動画像から、全身17点(頭部から尾部までを均等に16分割)の座標を導出し、全身の動きを詳細に捉える新たな方法を提案した。本手法により、これまでは評価できていなかった頭部-尾部間の距離や体幹のくねりの振幅,運動速度の変化等に基づく放射線影響の詳細かつ定量的な評価が可能となった。本発表では、放射線照射線虫の運動を新旧2つの方法によって評価した結果を示し、線虫における放射線生体影響を評価するための指標の重要性について議論する。